「この水は硬い」「この水は軟らかい」

こんな言葉を聞いたことがあると思います。これは水の硬度によるもので、いわゆる硬水、軟水のことを指しています。ここでは、硬水と軟水の違いや使い分け、それぞれ用途やメリットとデメリットを解説します。

水の硬度の解説記事

 

検査2課 岩波 「上水、水道水の硬度を測っています」

 

硬水、軟水の違い。硬度。

硬水、軟水はマグネシウムイオンとカルシウムイオンの含有量で決まります。これを硬度と呼び、硬度の値によって硬水か軟水か決まります。

 

硬度の説明図

硬度の説明図

 

硬度とは

硬度とは水中のマグネシウムイオンとカルシウムイオンの含有量を示したものです。国によって硬度の計算式は異なりますが、WHOでは「カルシウム塩の量とマグネシウム塩の量を合わせて炭酸カルシウム (CaCO3) の量に換算した値(mg/L)」(アメリカ硬度)を硬度としています。その値が120mg/Lより小さければ軟水、大きければ硬水となります。

ミネラルウォーターの硬度

硬度がかかわる身近なところだと、ペットボトルで通販などでも販売され手に入りやすいミネラルウォーター。ひとえにミネラルウォーターといっても、商品により硬度はさまざまです。

・コントレックス(Contrex):強い硬水

・エビアン (Evian):硬水

・ペリエ(Perrier):硬水

・ヴィッテル (Vittel):硬水

・ボルヴィック (Volvic):軟水

・クリスタルガイザー(Crystal Geyser):軟水

・南アルプスの天然水(サントリー):軟水

・北アルプスの清らか天然水(ゴールドパック):軟水

・アクアクララ:軟水

このように身近な商品でも硬水、軟水をあることが分かります。これらのミネラルウォーターを口にする機会があるなら、日常的に軟水や硬水に触れていることになります。

実は水は採水地の土壌や地盤、川の地理的特徴によってその硬度が決まります。

硬度と採水地の特性

日本の川と硬度

日本の水は地理的に硬度が低くなる

 

日本の水は軟水が主です(ただし一部のカルスト地域や沖縄県は硬水が多い)。それは日本の地理的な特徴によるものです。

多くの場合、ミネラルウォーターは井戸を掘って地下からくみ上げます。よってミネラルウォーターの特徴は地下水の特徴を指すことになります。

降った雨が地下に染み込んで地下水となり、地下で土壌や岩盤に接することで硬度の正体であるミネラルが溶け、地下水は硬度を増します。

しかし、日本の場合は急峻な地形のため、地下に水がとどまる時間が短く、地下を流れる水にミネラルが溶ける機会は少なくなります。また、たとえば『南アルプスの天然水』の採水地(甲斐駒ケ岳一帯の花崗岩質)のように、ほとんどミネラルを地下水に溶出しない地質もあります。日本の水に軟水が多いのはこのためです。

一方、ヨーロッパの水は硬水が主です。その理由はいくつかありますが、ヨーロッパの地形はなだらかで、降った雨の水は地下に染み込むとゆっくり移動して、その間に様々なミネラル、イオンが水に溶け出す時間があるためです。

アメリカでは地域によって硬度が大きく異なりますが、ニューヨークは軟水、ラスベガスは硬水だそうです。

このように地域によって硬度はだいぶ異なることが分かりました。ではこの硬度、私たちの生活に具体的にはどのような影響があるでしょうか?

硬度と味

硬度は水の味を変えます。硬水はほのかに苦味を感じます。軟水はなめらかで口あたりのいい、言い方を変えれば、何の味もない水です。日本には軟水が多いため、軟水が日本人には慣れた味と言われています。

料理との相性

軟水は食材からダシの成分であるアミノ酸などが溶け出しやすく、日本食に向いています。素材の風味や味を引き立てることが多い日本食には軟水が向いています。むしろ日本には軟水が多かったため、素材の良さが引き出せた、だから日本食のような繊細な調理が発展したのかもしれませんね。

お茶、コーヒー、紅茶、ウイスキーには硬水?軟水?

先ほど硬水は苦味を含むといいましたが、その理由でコーヒー、紅茶の風味、うま味にも影響を与えます。素材本来の味と香りを引き出すには軟水が良いとされています。また硬水で紅茶を入れると、紅茶の色が濃くなり、苦味も増します。ある研究では、硬度60以下の軟水がで抽出したものが良いという結果が報告されています。

ウイスキーには硬水、軟水両方とも使われます。硬水のミネラル成分が味に深みや複雑な風味を与えるとされます。逆に、軟水を使えば、そのウイスキーは口当たりがなめらかで、軽快な風味となるそうです。

ウイスキーに限らず、アルコール醸造においては、硬水だとミネラルが栄養分となって微生物の発酵が活発になり発酵が進んで辛口となるそうです。

赤ちゃんのミルクに使う水は軟水がいいか硬水がいいか?

ミルクに最適な硬度

ミルクに使う水は軟水がいい

赤ちゃんのミルクを作るときに使う水は軟水が望ましいとされます。ミルクは赤ちゃんに理想的な栄養成分で調整されていて、ミネラルもミルクの中にあらかじめ含まれていますが、硬水を使うことでその成分が過剰となり、必要量以上にミネラルを摂取してしまうため、軟水が勧められています。

ラベルには鉱水と書いてあります。硬水のことですか?

読みは同じ「こうすい」ですが別物です。「鉱水」というのは、ミネラルウォーターの品質表示ガイドラインで、「ポンプ等により取水した地下水のうち、溶存物質等により特徴付けられる地下水」の場合、表記されます。

まとめ

いかがでしたか?硬水、軟水という違いは、一見ささいな差に見えて、私たちの生活に深く関わっていることがお分かりいただけたと思います。

 


硬度を調べることができる水質検査セットは以下です。

飲料水検査・水質検査13項目セット
 

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